2−2 Want-toと創造性がゴール実現の鍵

エフィカシージャパン所属コーチの衣川信之です。

 「コーチングの教科書」の基本連載です。未来思考で世界中の人の創造性と天才性を育み、利他的な人を増やす活動であるコーチングの学び方を、基礎からわかりやすく説明していきます。

2−2 Want-toと創造性がゴール実現の鍵

 今日は、コーチングでとても大切なゴール設定の話です。ルー・タイスや苫米地博士のコーチング理論がかなり広がってきて、現状の外のゴール設定の重要性や、want-toでゴール設定をすることが大切であることは、かなりよく耳にするようになってきたと思います。コーチングが普及してきたということですから、それ自体はとても好ましいことだと思います。

 そうなんですが、現状の外にゴールを設定することも、そしてwant-toでゴールを設定することも、実は、かなり難しいのです。want-toでゴールを設定することはゴールの三原則の一つなのですが、want-toでゴール設定をするからうまくいかないことになりやすいのです。

 たとえ話をすると、ほとんど車を運転しない人に、あるいは、普通の乗用車の運転しかしたことがない人に、want-toでF1のレースマシンを運転してみてと言われたところで、F1のマシンなんて、want-toで運転しようがありません。何をどうすればいいのか、どこを触ればいいのか、また、触っていけないのかが、まるでわからない。あるいは、超プロ級の板前が使う包丁を渡されて、want-toで料理をしていいと言われても、どのように使えばいいのかまったくわかりません。プロのミュージシャンが使う音楽機材を渡されて、好きにプレイしてレコーディングしていいよと言われても、やはり何をどうすればいいのかわかりません。

 何か対象を離れて、切り離された、それ自体が独立した「want-to」なんてありません。詳しくは言語学などで考えていきますが、人間が話す言葉や単語は、必ず意味的なつながりを持っていて、部分―全体の双方向性があるゲシュタルト構造のなかで、意味を成し、機能していきます。want-toを好きなこと、やりたいことと頭の中で翻訳すると、文脈の中で必要なことがまったく見えず、ただ自分のやりたいことを好き放題、言いたい放題に主張し、うまくいくために考えたり、相談したり、努力をすることをせず、無責任で自分勝手な人が増えるだけとなり、仕事やビジネスの現場が成り立たなくしてしまうことはよくあります。

 受験勉強だって、そうですよね。合格するために、自分がやりたい参考書のやりたい部分だけやる選り好みをしていたら、合格する学力は身につきません。効果が出るのは、やるべき事柄、対象の性質によって、合理的な方法、うまくいく方法が見出されてきますし、よく研究されている分野では、うまくいく方法が既に知られていることだってたくさんあります。合格力を身につけるよく考えられたカリキュラムや宿題がある場合は、そのカリキュラムや宿題をやった方が、合格力は身につきます。

 だから、want-toとhave-toは難しい、見かけほど、言葉の印象ほど単純ではありません。ただ、やりたいことだけやる、好き放題やる、自分がいいと思うことだけやる、気分がいい現状を強化することだけやる、人から評価されそうなことをやる、得しそうなことをやる、自我が傷つかないことをやる、プライドを守れることをやる、ではありません。

 want-toとhave-toの出どころが問題なのです。過去の体験・知識から材料を集めてwant-toとhave-toを決めてしまっている。だから、どんどん現状が強化され、自分の現状の発想から抜けられなくなってしまいます。自分のコンフォートゾーンが維持できないから、自分の自我を強化したい自分は無意識で現状の外側を嫌っていきます。

 でも、現状の外のゴールから見たら、こっちだよ、こちらがいいよ、ということはあり得ます。ここで大切なのが、時間は未来から流れてくる、複数の未来がある、未来は選べる、自分は変えられる、自分のコンフォートゾーンは変えられるという知識、感覚、そして技術が重要になってきます。want-toとhave-toを、過去からではなく、抽象度の高い、未来のゴールから考えていく。足りないところは、柔軟に材料を集め、推論していく。ゴールが実現している未来に対して素直になっていく。未来思考で自己肯定感を高めていく。信頼ベースで自分や他者、世界を見ていく。物事の肯定的な側面を見る。

 これは自分のために起きていることなのではないか、そしてもっと良い未来を選択できるのではないか。最大限、自分や他者を理解できるのではないか。そうした時に、やはりゴールの世界へ協力できる自分や他者が存在する世界で、ゴールの世界へ意欲が出てくる。チャンスや成長の機会を与えてくれる、ドリームサポーターだらけの世界が見えてくる。そのようなゴールの世界に対し、周りと協力しながら、実現していきたい意欲が出てくる。困難や知らないことに対して、勇気が出てきて、自分のパフォーマンスや成長余地に信頼と楽しみが出てくる。

 楽しさ、自信、そして高いパフォーマンスは、未来思考から生まれてきます。未来思考はよりよい未来を自分やみんなが選べるということだから、高い抽象思考を伴います。ゴールの世界を実現できるアイデアや協力し合うことについて、どんどんクリエイティブに創造的になってきて、そうした素晴らしい未来、ゴールの世界を自分で選んでいく主体性、責任感、リーダーシップ、貢献したい思い、そして他者を評価、尊重、感謝する思いが出てきます。現状の外のゴールに対し、クリエイティブになる。やはりwant-toではゴールの重要原則です。

 趣味以外のゴールでは自分以外の他者の宇宙が存在し、関わりが生まれてくるので、want-toのゴール設定というのは、自分以外の他者の宇宙を尊重する高い抽象度から生まれてくる創造性のことだと考えれます。

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