エフィカシージャパン所属コーチの衣川信之です。

  「コーチングの教科書」の基本連載です。未来思考で世界中の人の創造性と天才性を育み、利他的な人を増やす活動であるコーチングの学び方を、基礎からわかりやすく説明していきます。

1−1 コーチの三原則

 コーチングを学ぶ時にはいつも、ルー・タイスの基本三原則を思い出し、タイスの基本三原則から考えるようにしています。

 コーチングでは、心(マインド)の扱い方を学んでいきます。コーチングの本質は、利他的な人を増やす活動であることです。

 この場合に、利他的というのは英語では unselfish で、自己中心的でないことを意味します。自分にも自分の創造的な心の扱い方や他者との関わりの中で展開していく一つの宇宙があるし、他の存在にもそれぞれにその方の宇宙があります。自分の自由、幸せやゴールの実現だけでなく、他者の自由、幸せやゴールの実現を心から願い、そのように行動できる時に、人は幸せを感じ、本当の自己効力感(エフィカシー)を感じるのではないでしょうか。

 未来の世代を含むたくさんの人の自由や創造性を育み、相互に尊重し協力し合える平和な世界の出現の基盤となる可能性を持った、人類の叡智の結晶であるようなコーチング。他者の自由や幸せを願って創造性を発揮し、互いの宇宙を豊かに意味あるものにしてきた先輩たちは人類の歴史の中にたくさん存在しますが、20世紀後半からの40年にわたる実践の中でコーチングの体系にまとめ上げ、多くの人のエフィカシーを高めてきたのが、元祖コーチと言われるルー・タイスです。

 人生の不思議な導きで、2009年に、ルー・タイスが開発したコーチングの体系(TPIEの前身となったプログラム)を、全編英語のファシリテータートレーニングという形で受講する機会がありました。その後に日本語版のTPIE(タイス・プリンシプル・イン・エクセレンス)のファシリテーター訓練も受け、それ以来ずっと、コーチングを学び続けています。ルー・タイスが来日して行われたファシリテーター会議の時に志願して通訳をさせていただいたこともあり、真横で、日本でコーチングを学ぶ人たちに心から温かい思いと言葉で励まし続けるそのお人柄の熱量を感じたことは、いつも自分の人生の基盤になっています。

ルー・タイスの基本三原則は、ルー・タイスの著書「アファメーション」(英語原著「Smart Talk」)の最初の方に述べられています。

私の人生は、次の三つの基本原則に導かれています。自分を偽らないこと(Authentic)、進歩的であること(Progressive)、有効な行動をとること(Effective)、がその三つです。

ルー・タイス「アファメーション」



 ルー・タイスの三つの基本原則(APE)は、人生の基本原則として述べられているものですが、今日でも、コーチングを学ぶ多くの人に「コーチの三原則」として受け止められ、コーチングを学び続ける人の指針となる「導きの星」のようになっていると感じます。

 ルー・タイスは、いい人でした。圧倒的にいい人でした。どんな人にも親切でした。名声を求めず、世界平和のために、たくさんの活動を行っていました。

 ルー・タイスのセミナーで、受講者が質問をした時に、言葉の一つ一つに真摯に耳を傾け、全身全霊で、その方の人生の希望となるようなアファメーションをその場で口述し授ける様子はあまりに美しく、多くの人の心に温かさを届け、人生への確信が生み出す深い感動を呼び起こしていました。

 人生には、その人の目的があると思います。その人生の目的も、能舞台のように、あるいは、ソクラテスが論じたように、実人生の脚本が演じられる舞台の前後があるのであれば、功利主義的な量化された幸福の大小だけで人生の成功を決められるわけでもなく、他者や社会が作り上げた価値観に影響されることのない純度100%の自分の本質が、時空を超えたところで自分の実人生の歩みを、いつも無条件の信頼と優しさと大きな叡智で見守ってくれているように感じる時もあります。

 人は人に出会い、影響を受けます。同質なものに同調するだけでなく、違うものに影響を受け、より広い視点を持っていきます。互いの宇宙が影響し合う出会いの中で、互いに学び合ってきた果てしのない歳月の中で広がる人生の未来は、星の明かりに照らされた平原(コンポステーラ)のように、その人の成長を見守るたくさんの人たちの思いに照らされているような気がします。

 敵を愛する教えそのものの純真さを持っていたアッシジのフランチェスコが高校時代のマイヒーローでした。でも、キリスト教の信仰を持とうと思っても、特定の解釈だけが正しいとは思えない。内村鑑三の無教会派にも一理あると思い、その後には「不可能性、不確定性、不完全性」という宇宙を探究する現代の科学や哲学の基調となるキーワードも知るようになっていきます。

 デカルトは(1596〜1650)は「我思う、故に我あり」と主体から出発しましたが、サティシュ・クマール(1936〜)は「君あり、故に我あり」と相互依存の関係性の方を起点にしています。どちらも本当だとすれば、一人一宇宙の宇宙はたくさんあって、それぞれが主体性を持ちながらも、相互に影響し合っています。

 だから、他者との関わりが出てくる社会、経済、法律のところでは、自己実現の願望成就を願う引き寄せの法則だけですべてが叶うわけではなく、他者の存在や自由を尊重した上でそれぞれのゴールを重ね合い、良い社会を現実的に創造していく、立法や行政、民間企業の活動・産業、地域やコミュニティの活動、地球環境、教育や医療、衣食住の営みも大切になってきます。

 人には、どんな世界のどんな自分になりたいか、というゴールがあるように思います。現代のコーチングでは、現状を超える大きなゴールと、ゴールの達成能力の自己評価であるエフィカシーが重要となる鍵概念です。

 隣人愛の教えに惹かれながらもキリスト教の特定の宗派の信仰を持つことはしなかったのですが、これも人生の不思議な導きで、大学生の頃に「ルルドの奇跡」の写真集を手にして、人生の旅の中でこうしたことが起こる宇宙の優しさについては、どこかでいつも信じるようになっていました。心を持つ存在にとって贈られた愛が忘れられることはなく、愛や優しさは、どんなに小さくても、成長の旅を続ける相手の人生の中でずっと温かいものとして残る永遠性を持っているのではないでしょうか。

 だから、人は人に愛を贈りたい、と思うのではないでしょうか。人の暮らしを豊かにする無数のアイデアが生まれ、互いに協力し合う気持ちも生まれるのではないでしょうか。怖れや支配したくなる気持ちの代わりに、愛や信頼や感謝が満ちることで、もっともっと、たくさんの人の才能や自由が発揮されやすくなるように思います。

 特定の宗派の信仰は持てないとあきらめ、現実の世界で人の役に立つために法律の勉強をしようと思った大学生の時に、三浦綾子の「塩狩峠」を読みました。人目をはばかることなく、電車の中で落涙し、自分の中で大切にしたいと思うことを取り戻しました。

 自分が出会う人から見て、親切な人、優しい人、いつも愛でいっぱいの人でいたい。

 その思いは自分の中で真実だと思えたので、そんな人でいられるように、心の中でそっと「愛の教え」という無宗教に従うことにしました。その時、不思議なことが起きたのです。バイトからの帰りに真夜中に駅で電車を降りて家へ向かう道を歩いていた時に、星々が燦然と輝き、暗い夜道が星の平原になったのです。

 「我が上なる星空と、我が内なる道徳法則、我はこの二つに畏敬の念を抱いてやまない」というカント(1724〜1804)が「実践理性批判」の結びで述べた有名な言葉を思うと、カントの思いに星空がきらめいて応えるような体験が、カントにもあったのではないかと想像します。カントの言う「内なる道徳法則」とは、外側からの強制力を持つ法律や規範ではなく、相手にとってもためになることを自分で定める行動の準則とするような、ゴールの世界の自分にふさわしい自分(セルフイメージ)になっていく心の動きであるように思います。

 いつもいつも理想の自分でいられるわけではありませんし、人生では努力したことがすぐに自分の思うように叶わないこともあると思います。でも、未来しかないから、いつだって、なりたい自分にはなれるし、やっぱり優しい人でいたいという思いが残る。ゴール側の自分になりたい、なっていきたいと思う自分がいる。

 そんな思いを持ってずっと普通に生きてきて、リーマンショックの余波の後でどうしようと人生最大のピンチに直面していた2009年ごろに、ルー・タイスのコーチングの体系に出会いました。それまでの自己啓発とは一線を画す本格的な内容に驚き、エフィカシージャパンという名前のコーチングの会社、未来思考の教育事業の会社を作りました。喜びと確信あふれる状態で受講したTPIEのクラスで、「衣川君はエフィカシー100%の人だ」と口々に言われたので、「エフィカシーの大切さ」を伝えてたくさんの人を励ましたいという思いが自分の才能だと素直に思ったからです。

 愛の人でいたいという思いは、イエスが最後の晩餐の時に弟子の足を洗うことで示された、人を最大限に大切にする「洗足」の教えにつながると思い、エフィカシージャパンの社是を「洗足」の教えとし、人を宝物と思うような原則や文化を大切にしています。

 ルー・タイスが築き上げたコーチングの体系は、その後は認知科学をベースにした苫米地式のコーチングとして今でも最先端で驚異的な進化を続けています。

 私は、コーチングの学びに関しては、「守破離」の「守」しかないと思っています。それだけ圧倒的に深く、大きく、難しい壮大な体系になっています。物理世界を遥かに超えて最も抽象度が高い、だからこそより根本的であるような、心の扱い方は、人生のすべてをゴールが実現する方向へ変えていく、奥深さを持っています。

 コーチングを学び始めて、もう12年が経ちました。コーチングを知りたい、どうやって学べばいいのかわからない、という人も周囲に増えてきました。こちらのブログでは、たくさんの人の素晴らしい夢やゴールがそれぞれに叶い、大きなゴールを共有し、互いに尊重し合える素晴らしい世界となるように、コーチングの学びに役立つ記事を書いていきます。

 世界中の人々のエフィカシーが高まるような活動をしたい。ドリームサポーターだらけの世界を創造したい。憧れのコーチである、ルー・タイスや苫米地博士と同じ世界が見たい。三つの原則に表れているルー・タイスの心に見守られながら、コーチングを学び続ける人生を歩んでいきたいと思います。

夢を叶える秘訣がいっぱい!エフィカシーコーチング動画
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